「すみません、待ちましたか?」
「いや、今来たとこだから気にすんな。」
準備に手間取り、待ち合わせを3分だけ遅刻してしまった。 のに、会長は笑いながら頭を撫でてくれた。
「んじゃ行くか。」
「はい!」
目指すは屋上庭園! 帰り道みたいに手を繋いで歩けば、自然と怖い夜の道も楽しくなる。
「うわあ……綺麗…!」
「だな、空はいつ見ても飽きねぇよ。」
屋上庭園のドアを開けば空一面に散りばめられた星たち。 その1つ1つが綺麗に輝いて私たちの目に映る。 会長の言う通り、この空は私たちを飽きさせてはくれなくて。
「そういえば私、会長と2人で星を見るの、初めてですよね?」
「そうだな……いつもは生徒会メンバーの誰かいたしな。」
「ふふっ、嬉しいです。 会長とこんなに綺麗なものを2人占めできるなんて。」
にへらっと笑えば、急に真面目な顔になる会長。 あれ、もしかしてイヤだったのかな? バクバクと嫌な速さで高鳴る心臓が痛い。
「莉羽、」
「な、んですか…?」
ジッと私の目を見て口を開く会長に、引き攣ったみたいな声しか出ない。 そんな私なんかお構いなしに、会長の手がスッと私に伸ばされる。
ぎゅっと目を瞑った私。 何されるかと思えば、ふわりと頬に冷たい手が触れた。
「目、開けろよ。」
「っかい、ちょ…!」
「悪い、怖がらせるつもりはなかったんだ。」
会長の声に目をそっと開ければ、何かを堪えるような会長の顔。 でもすぐに見えなくなって、今度は全身を包む暖かい何かと、少し速い心音。 会長に抱きしめられたと気付いたころには、もう聞こえる心音が私のものか会長のものかなんてわからなかった。
(「ーっ、会長…!」) (「…ちょっと黙れ。」)
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