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「すまなかった。」

「や、別にわかっていただけたなら……それに、隣で寝てた俺も俺ですから…。」


頭を下げる不知火先輩に逆に申し訳なくなる。
いや、確かにちょっとビビったがケガしたわけじゃないし、何より慈雨を思ってのことだったし。


「とりあえず、慈雨はもう連れて帰「やだ。」

「……慈雨。」

「隆といるもん。」


やめてくれ。
ぎゅっと腕に抱きつく慈雨はかわいいんだが、それより不知火先輩が不憫だし怖い。
というか、さっきまで帰りたそうにしてたのに、なんで素直になれんのだこいつは。


「なぁ、そろそろ戻ってこいよ慈雨。」

「やだ。」

「頼むって。」

「やだ。」

「慈雨。」

「やだ。」


……何、こう離婚間際の夫婦みたいなやりとり。
しかもやだって言う度に抱きしめる力強くするから、不知火先輩の眉間のシワも深くなってんだけど、宮地並なんだけど。
ほんと俺を修羅場に巻き込まんでほしい。
こういうのは第三者の立場が1番楽しいんだ。


「だあもう!
何が不満なんだ!」


あ、キレた。
ダンッと近くの小さな机を叩く不知火先輩。
ちなみに今、カーペットの上に3人で円になるように座ってんだけど、慈雨が俺(の腕)に抱きついてるから二等辺三角形みたいになってる。
あ、こんな情報いらんって?


「一樹さんがっ、もう私のこと好きじゃないんだから、私はもう帰らないの!」


……え、ちょっと、なになに。
もしかしてこれ、すっげぇ厄介なのに巻き込まれてんじゃね?俺。





(「だからなんでそうなるんだよ!」)
(「だって、だってそうじゃない!」)
(「お、落ち着けー?」)
(「「うるさい!」」)
(「(……もうやだ、泣きたい。)」)




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