「……ん、」
目が覚めて、隣を見る。 すると隣で寝ていたのは隆で。 一樹さんじゃ、ない。
そのことになんだか胸がズキンと痛む。 いなくなったのは、私の方なのに。
「なんて面してんだ。」
「! 隆……おはよ。」
「はよ。 戻りたいなら、素直になれよ。」
いつの間にか起きていた隆が座りながら頭を撫でる。 いつも、隆はそう。 でもその優しさが嬉しくて、情けなくて。
「私、ケンカしたの。 ……というか、なんか私の逆ギレっぽいというかそんなんなんだけど。」
「だろうとは思ってたけどな。」
「……あーぁ、隆にはお見通しか。」
ごろん、と仰向けになっておでこに右腕を置き、隆を見上げる。 ニッと笑ってる隆は、相変わらずで、なんだか笑えた。 そのときだった。
ガチャッ、
「「え?」」
いきなり、ものすごい勢いでドアが開いた。 ちょっと待って、あんたカギ閉めてなかったの、とか言いたいことはいろいろあったけど。
「てめぇ、俺の慈雨に何しやがった!」
「は? 俺?」
少しの沈黙のあと、ガッと隆の胸倉を掴む一樹さんに言葉が全部のどの奥に引っ込んだ。 隆は状況整理できてないのか、半笑い気味。 ちなみに一樹さんはきっちり靴は脱いでいた。 ある意味すごいよ、この人。 なんて頭の片隅で考えていた。
「っえ、かず、き……さん…?」
「慈雨、無事か?!」
現実逃避をやめ、やっとの思いで出した声に反応した一樹さんが、パッと隆を離して私を抱きしめる。 力加減ができないのか、ちょっとだけ痛い。 というか、私にも状況整理の時間をください。
(「あのー……とりあえず落ち着いて話でも、」) (「あぁ?」) (「(……デシャヴ。)」)
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