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「ありがとうございましたー」


………買っちまった。
いや、いずれは買うつもりだったっていうか……まぁ、なんだ。
給料3ヶ月分の指輪をかばんにしまって、とりあえず家に帰ろうと歩きだした。


「あ、一樹さん。」

「ぅお?!」

「……そんな驚かなくても。」


家の側の角で、ばったり慈雨と会う。
普段ならこんなに驚かなかったけど、今日は何かといっぱいいっぱいで。
少しムッとしている慈雨に軽く謝ってから家に向かう。
もちろん隣には慈雨。
ただそれだけなのに何故かすごく緊張して、話題とか何も出てこない。
いつも、どうしてたっけな。


「………ねぇ。」

「な、なんだ?」


黙々と歩いていたら、慈雨のさっきより機嫌の悪そうなムスッとした声。
慈雨の顔を見れば、声と同じく不機嫌そうで。


「……私のこと、嫌いになったんならはやくそう言ってよ。」

「は…?」

「一樹さんのばーか!」


それだけ言って走り去る慈雨。
もちろんのことながら家とは逆方向なわけで。


「ちょっ、慈雨…!」


放心状態から解放され、バッと振り向いたときには慈雨の姿はなかった。





(「なんなのよ、なんなのよあいつ…!」)




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