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きっかけは、確かテレビ番組だったと思う。


「結婚、か……。」


どこぞの芸能人の結婚報道を見た慈雨が、ぽつりと呟いた。
俺たちが付き合い出してもうだいぶ経つし、同棲もしている。
そろそろ身を固めることも考えていかなきゃいけないかもしれない。
そんなことを考えてた矢先だった。


「そういえば、月子ちゃんのドレス姿かわいかったなぁ…。」


つい先日に行われた月子の結婚式を思い出したのか、少しだけ頬を緩める慈雨。
俺はその横顔をジッと見つめていたらしい。
不意に慈雨が俺の方を向いて、ぱちっと視線が合う。


「一樹さん?」

「………お前、」


こてん、と首を傾げる慈雨の頬に手を添えた。
そのときにちらりと見えたのは、慈雨の前に置かれたからっぽのプリンの容器。
……プリンの、容器…?


「って、それ俺が大事に残してた…!」

「え? ……あぁ!」

「おまっ、俺があれだけ楽しみにしてたものを知っておきながら…!」

「えへ、ごめんね?」


てへぺろ、みたいに謝られても誠意が伝わらん。
かわいいけどな、さすが俺の慈雨だ!
じゃなくてだな!


「ほんっとにねぇ、カスすらねぇ…!」

「おいしかったよー」

「そりゃそうだろうよ!
ものっすげぇ高かったんだよ、これ!」


ああ……さよなら、俺のプリン…。
1口でもいいから食べたかった。





(「また買えば?」)
(「もうそんな金ねぇんだよ……。」)
(「どーんまい!」)




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