「わぁ、慈雨ちゃんキレイ!」
「つ、月子!」
控え室にて。 緊張でがちがちの私の元に現れたのは月子。
「月子ぉ…。」
「緊張してるの?」
「……うん。」
情けない声の私にクスリと笑う月子。 うわぁ、すっごく絵になるよ。
「私も緊張したなー」
「え、そなの?」
「そりゃあねー。」
自分の結婚式を思い出したのか、柔らかい笑顔を浮かべる月子。 うん、なんか大人っぽいな。
「きっと慈雨ちゃんも、一樹先輩の姿を見たら落ち着いてゆっくり楽しめるよ。」
「月子のとき、そうだったの?」
「うん、あの人の顔みたらすっごく幸せな気持ちになれて……だから、慈雨ちゃんも大丈夫!」
ぎゅっと私の手を握る月子に、なんだか大丈夫な気がしてきた。 しばらく話してから、もう時間だーって月子は先に会場に。 そのちょっと後に係の人が来て、私も会場に向かった。
「緊張してるのか?」
「ん、まぁ。」
バージンロードを歩くちょっと前、お父さんとそんな話をする。 緊張気味の私にお父さんは優しく笑った。
「一樹くんなら、大丈夫だ。」
「お父さん?」
「……慈雨は、いい人を選んだよ。」
そう言って優しく微笑んだお父さんに、私も照れながら笑う。 そんな私たちを微笑ましげに見ていた係の人は、時計を見てからお父さんに話しかけた。
「もうすぐですよ。」
「あぁ、はい。 行こうか、慈雨。」
「うん。 ……お父さん、ありがとう、大好きだよ。」
小さく呟いた言葉はお父さんに届いたらしい。 嬉しそうに笑って「父さんもだよ。」って言ってくれた。
「っ、」
ギッと開いた扉から割れんばかりの拍手に、ぎゅっとお父さんの腕を持つ手に力を込める。 すると、お父さんがクイッと腕を引き前を見させた。
「一樹、さん……。」
バージンロードの先で、一樹さんがこちらを目を見開きながら見ている。 でもそれは一瞬。 柔らかい笑顔になって、口パクで「キレイだ。」って言われた。
「っ、お父さん。」
「なんだい?」
「私、ほんとに幸せ者だよ…!」
そうかい、そう優しく言ったお父さんに引かれるようにバージンロードを歩いた。 きっとこの瞬間は、ずっと私の心に残るんだと思う。
幸せ行進曲 (たくさんの人に祝福されて、大好きな人の元に。)
-fin-
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