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確か私が梓に「風邪引いたから休む」ってメールしたのが事の発端。


「食欲ある?」

「いや、あんまり、」

「でもちゃんと食べなきゃずっとツラいよ?
あ、もしかして口移ししてくれってこと?」

「それじゃあ風邪うつっちゃうよ。」


あまりにも平然と私の部屋にいる梓に看病されてる私。
いつもより3割増しくらいで優しいわりに通常運行の発言。
布団を目元まで持っていかなかったら、確実に口移しっていう名のちゅーされてた。


「うつした方が早くよくなるよ?」

「でも、梓にうつしたくないもん……。」

「……名前、」


言ってから恥ずかしくなってきた。
なんだか梓の顔も心なしか赤い。
それでこの次の梓の行動と言えば。


「1回だけでいいから、キス、してもいい?」

「ダメだっ、ん、」

「……しちゃった。」


そうくると思って布団を持つ力を強めたのに、梓はやすやすと布団を退けてちゅーしてくる。
離れたあとに、その表情は卑怯だと思う。


「梓のバカ、」

「え、もっかいしてほしいの?」

「だからっ、ダメ、」

「聞こえなーい」


楽しそうに笑う梓は、唇だけじゃなくて頬やおでこや瞼や首筋、とにかくいろんなところに唇を寄せる。
少しひんやりした唇が、冷たくて気持ちいい。


「……名前の目、とろんとしててかわいい。」

「梓が、」


耳元に唇を寄せて、甘く囁く梓。
私が何かいう前にもう一度唇を重ねて、キレイに微笑んだ。


「もう寝てなよ、僕が傍にいてあげる。」

「あず、」

「おやすみ、僕のお姫さま。」


なでなでと頭を撫でる梓の手を感じながら、そのままゆっくりと目を閉じる。
もう片方の手は私の手と繋いでくれていて。
私はいつの間にか意識を手放していた。




甘い熱に浮される
(「ん、もう熱もないし大丈夫みたいだね。」)
(「やった! あ、梓は大丈夫?」)
(「僕? 僕はなんともないよ。」)
(「そっか……ならよかった!」)




*莉子さまに捧げます。


甘い……なんかもう梓くんが「病人相手に何やってんだ!」って感じになりましたね…。
たぶん最後に梓くんに風邪がうつらなかったのはあわよくばヒロインに看病してもらおうって邪心があったからですよ、きっと。
もし気に食わないようなら返品、書き直し受け付けてますので!

莉子さまのみお持ち帰りください。


バレンタイン企画へのご参加、ありがとうございます!




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