なんでこうなったの。
「……翼、くん?」
私が渡した(シャレじゃないよ!)チョコを片手に笑う彼。 ちなみに笑うって言っても、いつもみたいな無邪気な笑顔じゃない。
「これ、苦いやつ?」
「え、あ……甘さ控えめではある、けど…。」
「なんで?」
なんでって言われても。 “甘すぎるの、翼はイヤがるよ”って梓くんが、梓くんが……あれ、もしかして。
「翼くん、甘いもの……好きだったりする…?」
「苦いのよりは好き。」
「あっ、そ、そうなん、だ…。」
梓くんのばか! だからあのときすっごいいい笑顔だったのか! ああもう、なんで。
「ごめんね、翼くん。」
「なに?」
謝りながらスッと手を出したら、その手を不思議そうに見る翼くん。 バレンタインには間に合わないけど、さすがに苦手なものを彼氏にあげるほど私は非道じゃない。 作り直すから返してもらおうとしたんだけど。
「ダメ。」
「なん、……んぐっ!」
「食べちゃダメだよ。」
翼くんは私の手にチョコを渡さずに、そのうちの1粒を私に銜えさせる。 うっ、苦い。 私も正直、苦いもの苦手なんだけど…。
「……じゃあ、いただきます。」
「んっ?!」
なにするんだろう、とは思ってたけど。 翼くんはあろうことか、私に銜えさせたチョコを舌で搦め捕った。 それからそのままキスしてくる。 苦いはずのチョコが、じんわりと甘く感じて不思議な感じ。 最後にペろりと私の唇を舐めて離れる翼くん。
「……苦い。」
「ご、ごめん、ね。」
少し眉間に力をいれて言う翼くんに謝れば、ニヤリと笑われる。 それから私の耳元に口を近付けて「名前のおかげでちょっと甘くなったから大丈夫。」なんて言われた。
翼くんが無邪気なんて、誰が言ったんだろうか。 私は胸のどきどきを悟られないように、ぎゅっと手を握りしめた。
無邪気な彼の本気 (恥ずかしいけど、こんな翼くんを見れたんだから梓くんに感謝だね、なんて。)
*涼さまに捧げます。
鬼畜ってどんなのか書いてるうちにわかんなくなって、中途半端なものになっちゃいました…。 もし気に食わないようなら返品、書き直し受け付けてますので!
涼さまのみお持ち帰りください。
バレンタイン企画へのご参加、ありがとうございます!
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