「おい、白鳥ー!」
不意に聞こえた苗字の声に、自分が呼ばれたわけじゃないのに振り返る。 するとチョコを配っていたらしく、白鳥のテンションが異常に高かった。
「うおおおおおおお苗字のチョコだああああ!」
「うるさっ! そんな立派なヤツじゃないのに。」
「女の子からのチョコに喜ばない高校男子はいない!」
いいなぁ。 思わず呟いた言葉に自分自身びっくりした。 チョコは夜久からもらったんだし、チョコが特別好きってわけでもない。 じゃあ、なんで羨む必要があるんだ。
「あ、陽日先生だー!」
「……お、苗字か!」
「陽日先生?」
考え事していたから反応が遅れた。 それを不思議に思ったのか、顔を覗く苗字。 チビチビ言われてるオレだけど、苗字に比べたらまだ高い。 つまり、上目遣いの苗字が結構近くにいてるわけで。
「な、なんでもない!」
「? そうなんですか? まぁ、とにかくこれどうぞ。」
「……くれるのか?」
「いらないんですか?」
「いる! ありがとな!」
引っ込めようとした苗字のチョコを慌てて受け取る。 たったこれだけなのに、言葉には表せないほど嬉しい。
でも、それが虚しいのも知ってる。 だって苗字は。
「あ、星月先生知りません?」
「琥太郎センセ、保健室にいないのか?」
「さっき見たとき、いなかったんです。」
せっかく感謝の気持ちを伝えようと思ったのに。 そう言って頬を膨らます苗字。 わかってた、苗字がバレンタインに教師にチョコを渡すのは“感謝”の気持ちであって、オレが期待するような気持ちはない。
「じゃあ私はこれで。」
「おぅ! これ、ありがとな!」
オレの声に笑顔でお辞儀をする苗字。 去っていく苗字を見送ったあと、少し顔が歪んだ気がした。
報われない恋心 (どうして、オレは教師であいつが生徒なんだ。)
*晶さまに捧げます。
名前変換、苗字だけですみません…! もし気に食わないようなら返品、書き直し受け付けてますので!
晶さまのみお持ち帰りください。
バレンタイン企画へのご参加、ありがとうございます!
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