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「そうだ、梓の部屋に行こう。」

「は?」


昼休み。
ひょんなことから知り合った名前が、いきなりそんなことを言い出した。
急に言われても困る。
ていうか、僕ら付き合ってないよね?
ダメだと思わないの?


「ダメに決まってるでしょ。」

「なんでよぅ!」

「そのセリフ、そっくりそのまま返すよ。」

「梓のケチ!」

「ケチとか言われてもダメなものはダメ。」


ぶーぶー文句を垂れる名前に頭が痛い。
だいたい自覚がないんだよ、名前は。


「なんでダメなのよ!」

「名前の自覚がなさすぎるから。」

「なんの自覚なの!」


言わなきゃわかんないのか。
そう思うとため息がこぼれた。


「あのね、名前。
名前は女なの、わかるよね?」

「わかるよ。」

「じゃあ、僕が男なのもわかるよね?」


無言で頷く名前。
さすがにここまで言えばわかるでしょ。


「もう少し、ちゃんと自覚してよ。」

「でも、梓は大丈夫だよね。」


名前の言葉に絶句。
怒りを通り越して呆れてくる。
どうやってこのバカにわからせてやろうか。


「あのねぇ、」

「それにね!」


ため息を1つついて口を開けば、それを遮る少し大きな名前の声。
びっくりして名前の顔をみたら、りんごみたいに真っ赤で。


「あ、梓だったら、別に大丈夫だし!」

「は…?」

「じゃあもう授業だから行くね!」

「え、ちょっ、名前!」


僕の静止を無視して走り去る名前に、イスから立ち上がったまま呆然と見送るしかできなくて。
あぁもう、きっと今の僕もさっきの名前と負けず劣らず真っ赤なんだろうな。
もちろん、午後の授業に集中できるはずもなかった。



不意打ちの言葉
(「捕まえた。」)
(「あ、梓…?!」)
(「僕の部屋、くるんでしょ?」)
(「え、い、いいの?」)
(「名前が言い出したんでしょ? ちょうど部活もないし、特別だよ。」)
(「あ、りがとう…。」)




*もこさまに捧げます。


同い年ヒロインにしちゃった上に出会いがあやふやなものに……こんなので大丈夫ですか?
もし気に食わないようなら返品、書き直し受け付けてますので!

もこさまのみお持ち帰りください。


バレンタイン企画へのご参加、ありがとうございます!




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