好きな子ほどいじめたいって言葉、知りません? まぁ、今さら言っても仕方ないんだけど。
「ぅあ……木ノ瀬くん、こんにち、は。」
「こんにちは、先輩。 それよりどうしたんですか、その髪。 いつも以上に変ですよ、時間がなくて寝癖のままきたんですか?」
ほんとはふわふわの髪がかわいい、って言いたかっただけのに。 気付けば口をついて出た言葉はそんなトゲで。 それを聞いて泣きそうな名前先輩が、かわいいと思った。
「おい、木ノ瀬! お前いい加減にしろ!」
「……なんですか、宮地先輩。 そうして名前先輩の彼氏気取りですか?」
「木ノ瀬!」
毎回、僕と名前先輩の話に割って入る宮地先輩が鬱陶しかった。 素直になれない僕に、宮地先輩は分が悪い。 いつもみたいに半泣き状態で宮地先輩に泣きつく名前先輩と慰める宮地先輩を見て、小さく舌打ちをする。 これじゃ僕はただの当て馬だ。 僕だって名前先輩と仲よくなりたいのに。
そんな毎日を過ごしてたある日。 ついにその時がきた。
「は?」
「聞こえなかったのか? 俺たちは付き合うことにした、だからもう名前の迷惑になるようなことはするな。」
宮地先輩に呼び出されたと思えば、仁王立ちでそんなこと言われた。 名前先輩が、宮地先輩と……あまりの衝撃に、きっと情けないくらい驚いていたんだと思う。
「お前が名前を嫌うならそれはそれでいい。 ムリに好きになれとは言わないしな。」
僕が名前先輩を嫌う? むしろ逆、好きなんですよ、名前先輩が。 宮地先輩よりも、ずっと深く。
「じゃあそれだけだ。」
言いたいことを言ってスッキリしたのか、去っていく宮地先輩。 僕はやり場のない気持ちを持て余していた。
どうして? 何がいけなかった? 僕が素直にならなかったから? それとも名前先輩が鈍かったから? ……もう、考えるのも億劫だ。
僕はその場に座って、空を見上げる。 流れる雲がまるで僕を嘲笑ってるようだった。
後悔先に立たず (できるなら、会ったばかりの僕らに戻りたい。)
*こあさまに捧げます。
からかうって、なに?! と自問自答を繰り返した結果、こうなってしまいました…。 もし気に食わないようなら返品、書き直し受け付けてますので!
こあさまのみお持ち帰りください。
バレンタイン企画へのご参加、ありがとうございます!
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