学校にもなれた6月の初め。 弓道部の顧問だという、オレンジの先生に誘われて見学に行った梓くん。 昨日はあれだけ“ダルいけど、鬱陶しいし仕方ない”みたいな感じだったのに。
「え?」
別に梓くんが何をしようと私が口を出す権利も、ましてや辞めさせる権利も持ってないけど。 にこにこと弓道部に入部することを伝えてきた梓くんに、びっくりして固まるのは仕方ないと思うんだ。
「前、あんなに入らないって……。」
「僕も入るつもりなかったんだけど、どうしても入りたい理由ができたんだ。」
「入りたい、理由?」
嬉しそうに、でも真剣な眼差しに何も言えなくなる。 翼くんはもう生徒会に入ってしまってるから私はずっと梓くんといたんだけど、これからはそれも難しいのかも知れない。 ちょっと……いや、すごく寂しいけど、梓くんの決めた道。
「そっか、じゃあがんばってね!」
「瑞紀に言われなくてもがんばるよ。」
「ふふ、生意気。」
「そういう瑞紀の方が生意気。」
クスクスとお互い笑い合う。 やっぱり、どんなに寂しくても梓くんが選んだことなら全力で応援しなくちゃ。 そう素直に思える。
「これから、一緒に帰れなくなるけど……1人で大丈夫?」
「大丈夫!」
「はぁ……瑞紀の大丈夫は大丈夫じゃないから心配なんだよね。」
そう言って私の頭を撫でる梓くん。 こうしてるときは、梓くんが本気で心配してるとき。 ……そんなに、信用ないのかな。
(「まぁ休みのときは一緒に帰れるから、僕の部活がある日はすぐに帰って寄り道しないでね。」) (「うん、ありがと。」) (「はぁ……ほんとに大丈夫かなぁ…。」)
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