「! 瑞紀!」
「わっ!」
登校中、翼くんの声が聞こえたと思った瞬間、背中に大きな衝撃。 びっくりして振り返……れない、けど匂いや見えた腕(というかカーディガン)からやっぱり翼くんなのがわかった。
「瑞紀、熱は? もう大丈夫なのか?」
「もう大丈夫だよ、ありがと。 それとお見舞い来てくれたんだってね? それも、ありがと。」
「気にするな、なのだ! 瑞紀が元気になったんなら、それでいいんだぬーん!」
そう言ってぎゅうっと抱きしめる力を強めてくる翼くん。 なんかこう……翼くんの抱きしめ方、好きなんだよね、私。 なんていうか、包み込まれてる感じ? 少し距離開けるようにしてたから久しぶりにされたっていうのもあると思うけど、なんか泣きたくなってきた。
「……何してんの?」
「! 梓くん!」
「梓! ほら、瑞紀が復活してるんだぞ!」
「はいはい、わかってるから離してあげなよ。」
少し苛立ってそうな雰囲気の梓くんに動じることなく、私を抱きしめたまま話す翼くん。 なんだろう、なんか梓くんの顔が怖くて見れないんだけど。
「いやなのだ! やっと久しぶりに瑞紀とぎゅーできたのに、離したくないぞ!」
「翼くん、」
「何言ってんの、瑞紀は病み上がりなんだから早く離してあげな。」
「あ、梓くん…?」
「いやなのだ!」
「翼?」
「絶対!いやなのだ!」
従兄弟喧嘩に私を巻き込まないでください。 2人とも、なんか怖いです。 というか、翼くんのわがままという名の甘えはいつものことなんだから、そんなにムキにならなくてもいいんじゃないか、梓くん?
「瑞紀は俺とぎゅーしてたいよな?」
「え?」
「離してほしいよね?」
「えと?」
「「どっち?」」
「……や、その、」
どうやらこの2人は、私を巻き込んだ挙げ句に、私に最終決定権を譲ってくれたようだ。 どっちを選んでも、どっちか拗ねる感じじゃないのよ、これ。 正直嬉しくない。
考え倦ねている私に、早く早くと急かす2人は私のこと嫌いなんですか、そうなんですね。 ああもう、なるようになれ。
「私、別にこのままで大丈夫だよ?」
「!」
「やったぁなのだ! じゃあまだしばらくぎゅーしてるからな!」
無意識に、梓くんの意見を避けてしまった私。 あまりにもあからさまな自分に、思わず少し苦笑してしまった。
(「……僕、用事思い出したから先行くね。」) (「え?」) (「ぬ、そうなのか?」) (「うん、2人とも遅刻しないようにしなよ。」) (「あ、うん。」) (「うぬ、わかった!」)
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