「なっ…!」
「これは、」
「梓?!」
「どうしてここに…?」
これが俺らの第一声。 ちなみに上から順番に俺で颯斗で翼で月子。 言い訳させてもらえるなら、別に俺たちに覗き見の趣味はない。 何度かインターホンを押したがでなかった挙げ句に、部屋の鍵が開けっ放しになってたら、誰でも入っていたと思う。 ちなみに颯斗と月子は反対していたが。
「梓が瑞紀と……瑞紀と梓が…」
「落ち着いてください、翼くん。」
「…………。」
従兄弟とクラスメイトがこうなっていたからか、少し壊れた翼を颯斗が現実に連れてこようと試みているのを視界の端で捉える。 それよりも俺が気になったのは月子。 呆然、その言葉通りただ2人を無言で見つめていた。 幸いなことに、泣き出しそうな雰囲気ではない。 でも視線を落としたときに、ふと月子の手が目に入った。
「……おい、」
「! なんですか?」
肩を掴みながら声をかければ、ビクッと体を震わせて何事もないように笑う月子。 でもグッと力を入れた手は白くなるほどで、見てるこっちがツラくなってくる。
「お前、もしかして、」
「っるさい、なぁ…。」
「! 梓くん?!」
「あれ……夜久、先輩……?」
「ぬわああああああん、梓あああああああ!」
「うるさっ、……ていうか翼まで、どうしてここに…?」
(翼が)騒がしかったのか不機嫌そうな声で俺の言葉を遮り、のっそり起き上がる木ノ瀬。 でも途中で不自然に止まり、微妙な体制で月子を見る。 よくよく見れば、瑞紀に抱きつかれてるらしく、あまり身動きがとれないようだ。 それから翼に泣きつかれていたからだろう。
ものすごく傷ついた顔をした月子に、木ノ瀬は気付かなかった。
(「……なるほどな、そういうこと、か…。」) (「? 会長、どうしたんですか?」) (「あぁ、颯斗か。」) (「なんですかそのドヤ顔は。」) (「引いた目をするな、すごく傷つく。」)
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