「なんで早く言わないのさ。」
「えへ。」
どれだけ連絡しても返事はないし、心配になって部屋に来たら居留守。 ちなみに、なんで居留守って気付いたかっていえば、微かに部屋の中で音が聞こえたから。 まぁそれはともかく、やっとこさ出てきた瑞紀は見た目普通だったっていうのに、部屋にあがろうとした僕に触れた手が異常に熱くて。
急いでベッドに連れてったり、熱測らせたら38℃ジャスト。 なんとかは風邪引かないんじゃないの?
「病院は?」
「行ってない……動きたくなかったし。」
「てことは、ご飯も食べてないわけ?」
「……うん。」
瑞紀の言葉にため息。 とりあえず、お粥作ろうかな。 そう思って「大人しく寝ときなよ」とだけ告げて瑞紀の部屋の鍵を探そうとしたときだった。
「どこ、行くの…?」
「瑞紀?」
「つき、こ、せんぱ、いのとこ…?」
クイッと瑞紀に裾を引っ張られ、熱に浮かされてるからか赤い頬に涙目でそんなことを言われた。 自分で言っときながら不安になったのか、裾を握る手に力が篭っていて。 ぐらり、理性が揺らいだ気がした。
「やだ、行かない、で、……傍にいて、」
「……瑞紀、」
どうやら涙目だったのは熱のせいじゃないらしくて、ついに溢れ出した雫が瑞紀のつぅっと頬を伝った。 反射的にその涙を拭おうと近付けば、瑞紀がぎゅうっと僕の腰辺りに腕を回して抱きつく。
「ちょ、瑞紀?!」
びっくりして、引き離そうとしたけど抱きついたまま服を握りしめてるのか離れない。 そして何よりタチが悪いのは。
「寝て、る…?」
体を起こしたときに限界がきたのか、瑞紀の顔を覗けば目を瞑っていて。 よく聞けば小さく寝息も聞こえる。
「………こんなこと、僕以外の前ではしないでよね。」
なんとなく、ぎゅっと抱きしめてからベッドに僕ごと入る。 お粥作りたかったけど仕方ない、予定変更で僕も一眠りすることにした。
(「……あ、ず、」) (「ん?」) (「………小豆、」) (「……小豆かよ、てかどんな夢見てんの…まぁ、いいや、寝よ。」)
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