「……あ、」
「梓くん?」
梓くんと飲み物を買いに自販機に向かうと、ピタリと足を止めた梓くん。
顔を覗けば、固まっていて。
「どうかした?」
「……あ、いえ。
それよりお腹も空きましたし、先に食べ物買いませんか?」
無理に笑う梓くんにとりあえず頷いて。
そのまま腕を引かれたから、慌てて梓くんがさっき見ていた辺りを見る。
その瞬間、見たことを後悔した。
「……梓くん、」
ぐいぐい引っ張る梓くんの名前を呼んでも、梓くんは気付かない。
きっとそれだけ余裕がないんだ。
会長が瑞紀ちゃんを抱きしめていて、瑞紀ちゃんも会長の服をぎゅっと握って抵抗してなかった。
それを見て逃げる梓くんを見れば、梓くんだって瑞紀ちゃんが好きなのを自覚しなくちゃいけないし私の失恋はもう決定。
かすかな希望もなくなったんだけど。
「ねぇ、梓くん。」
まだ、付け入る隙を探してる私はどれだけ醜いんだろう。
(「夜久、先輩?」)
(「ちょっとお話があるんだけど、いいかな?」)
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