「よぅ。」
「! 会、長さん……。」
すごい勢いで走り去る瑞紀に追いついて声をかければ、びくりと肩を震わせながらこっちに振り返った。 最近、生徒会室にこねぇからなんだか久しぶりに見たな。
「何してんだ? 今、弓道部の練習試合中だろ?」
「あ、えと、飲み物を買いにきたんです。」
「ウソだな。」
自販機を指差しながらそういう瑞紀の言い分を一刀両断。 いや、自販機にきたのはウソじゃないだろうが、他に理由があると思ったって意味で。 俺の言葉に目を見開く辺り、どうやら勘違いではないらしい。
「な、に言ってるんですか。」
「違う、とは言わせねぇぜ?」
「わた、しは、ほんとに飲み物を買いに、」
そう呟くように言った途端、ぐらりと揺れる瑞紀の目にぎょっとした。 泣かせちまう…?
「ちょっ、泣くなよ?」
「泣、いてません!」
「擦るなって。」
ごしごし服の裾で目元を拭うから、慌てて腕を掴む。 腫れちまうだろ、って言っても「泣いてませんから!」って言い張るから困った。
「わかった、お前は泣いてない。」
「ぅわ!」
「で、俺がお前を抱きしめたいからしばらく抱きしめられてろ。」
ぎゅっと瑞紀を腕の中に閉じ込める。 こうすりゃきっと目元擦らずに泣けるだろ。
こいつに何があったかなんて、わからないし言わないだろうけど。 せめてこいつの泣く場所くらいにはなれるだろうから。
大声で泣いてくれて構わなかったのに、瑞紀は肩を震わせながら声を押し殺して泣いていた。
(「っもう、だい、じょぶです、」) (「そうか。」) (「……ありがとっ、ございます…っ。」) (「気にすんな。」)
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