颯斗先輩の計らいというか圧力というか、そのおかげで翼くんはすごすごとラボに行った。 翼くんが起きたなら、翼くんと遊んでもよかったんだけど、騒いだら颯斗先輩に迷惑だし勉強するか。
「…………。」
「………。」
かりかりとシャーペンの音と、微かに聞こえる翼くんの発明をする音。 それからいつの間にか寝ていた会長さんの寝息。 静かに流れる時間に、私は久しぶりにものすごく集中していたらしい。 小さな足音がどんどん大きくなって、ふいにガラッとドアが開いた。
「ぅわっ?!」
「ちょっと瑞紀、驚きすぎ。」
「あ、梓くん…!」
びっくりしすぎて未だにバクバクする心臓を押さえていると、梓くんは颯斗先輩に声をかけてから私に近付いてきて。 そのままジッと私のノートに目を通す。
「梓くん…?」
「……運動といい勉強といい、ほんと見た目と中身が一致しないよね。」
「え?」
またため息つかれた。 なんなんだ、一体。 そんな私のことを気付かないフリして、「早く片付けて、帰るよ。」とだけ言って翼くんのもとに行ってしまった。
「ふふっ、木ノ瀬くんはお2人の保護者みたいですね。」
「確かにそうですね……梓くん、面倒見いいですし。」
颯斗先輩とお話しながら帰り支度をする。 最後に消しゴムのカスを集めてごみ箱に捨てて。 よし、完璧!
「ぬー、もう少しだったのに……。」
「別に残っててもいいけど、僕は瑞紀連れて先帰るよ?」
「ダメなのだ!」
「梓くん、翼くん!」
「支度できた?」
「うん!」
ラボから出てきた2人に声をかけて、最後に颯斗先輩にお礼を言う。 颯斗先輩は優しく笑ってから「また来てくださいね」って言って、生徒会室の前まで見送ってくれた。
(「あ、」) (「どうしたのだ?忘れ物か?」) (「生徒会室、戻る?」) (「違う違う、梓くんに部活お疲れさまって言ってなかったの!」) (「あぁ、ありがと。」) (「へへっ!」)
- 1 - *PREV|NEXT#
|