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「あれ、梓くん?」


昨日の電話が嬉しかったからか少し早く目が覚めたおかげで、いつもより早いけど朝のロードワーク中。
前を走っている見知った人影に、少しペースをあげて追いつく。
その姿はやっぱり梓くんで。


「おはよー」

「おはよ、珍しいね、瑞紀がこの時間に走ってるなんて。」


ちょっとびっくりしたらしく目を見開いてた梓くんだったけど、すぐにいつもみたいに意地悪く笑う。
私はそれに早く目が覚めたことを言えば、呆れられた。
失礼だな。


「それにしても。」

「ん?」

「瑞紀って見かけによらず体力あるよね。」


たったっ、と走りながら話す。
私よりも梓くんのが体力あると思うんだけど、さすが運動部だねって言えば、見かけによらずって言ったんだけど、って言われた。
しかもため息付き。


「幸せ逃げるよっ!」

「ため息つかなくても、瑞紀が僕の幸せ吸ってるんでしょ?」

「え、そなの?」


思わずそういえば、わざとらしくまたため息。
だから幸せ逃げるよってば。
そんなこと考えてたら、ふといいことを閃いたので「あっ!」ていう声が漏れた。


「どしたの?」

「あのね、私が梓くんの幸せ吸ってるんなら、私が梓くんに幸せな気持ちをあげる!」

「え?」

「そしたら私も梓くんも幸せ!」


そう言って笑う。
私と梓くんで幸せをはんぶんこなんて、我ながらナイスアイデア!


「瑞紀って、はぁ…。」

「ちょっと、なんでまたため息つくの?!」


いい考えだと思ってたのに、梓くんはしばらくポカンとしてからまたまたため息をつく。
ほんと梓くん私のことバカにしすぎだと思う。


「瑞紀って、ほんと突拍子もないことさらっと言うよね。」

「え、そうかな?」

「うん……でも、ありがと、瑞紀。」


そう言って笑った梓くんはふわふわで。
とにかく、今までみた笑顔の中で1番柔らかかったと思う。





(「あ、わ、私もう終わりなんだけどっ、」)
(「そう?じゃあ終わろっか。」)
(「え、梓くんは?」)
(「僕はとっくに終わってるよ。」)
(「え、もしかして付き合ってくれたの…?」)
(「まぁ、ね。」)
(「あ、ありがと…。」)
(「いーえ、どういたしまして。」)




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