ぱたん、携帯を閉じてゆっくり息を吐く。 そのままごろんとベッドに寝転べば、浮かんでくるのは瑞紀の顔。 今日、生徒会室で見せた悲しそうというかツラそうというか、そんな顔の意味が知りたくて、気付けば電話してた。
電話に出た瑞紀は相変わらずバカ丸出しだったけど、いつもと変わらないように思う。 だから理由なんか聞けなくて、結局わからずじまい。 何のための電話なんだって思ったけど、瑞紀が元気そうなのを確認できたし、何より僕が話せて満足してるからいいかな、なんて。
「……ははっ、僕らしくない、な。」
自嘲気味な言葉はするりと口から漏れる。 でも、ほんとにその通りで。 僕らしく、ない。
大体、僕は今まで誰かを気にかけることなんてしなかった。 なのに、何故か瑞紀は僕でさえ気付かないうちに何かと気にしていて。
「……瑞紀に執着、してる…?」
パッと浮かんだ可能性。 ガツンと頭を殴られたような衝撃。
まさか、僕が? そんなわけない、ありえない。
そう思うのに絶対、って言えなくて。 今までの僕がガラガラと音を立てて崩れていく。
でもそこで気付いた。 “僕は何も知らない”んだって、そう思えばいいんだ。 今なら間に合う。
起きたら何もかも忘れて普通に過ごすんだ。
(「……おやすみ、」)
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