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いろいろあって、部活に行くのが遅れた。
とりあえず近道しよう。
そう思っていつもと違う道を小走りで移動していたら、信じられないものを見つけた。


「え、由宇?」


イヤな笑顔の上級生たちに囲まれて笑ってる。
いや……無理矢理笑ってる、のか?
上級生たちは気づいてないみたいだけど。

気になってついていけば周りから死角になって見えない壁際に由宇を押し付けた。
あーあ、野外でって……そんなに飢えてるの?

仕方ない、助けるか。


「あれ、そこで何してるんですか?」

「あ、梓くんだー。」


わざとらしく言えば、焦ったような先輩たちの目が僕に向けられる。
不意に見えた由宇の顔は相変わらず笑顔だったけど、目に安堵の色が浮かんでいた。
まったく、素直じゃないヤツだよね。


「由宇、帰るよ。」

「あ、うん。」

「……って、そうはさせるか!」


由宇の手をとってその場を去ろうとしたのに、先輩たちは許してくれないらしい。
めんどくさいなぁ。


「先輩方、先輩方のためにもここは退いておいた方がいいですよ?」

「な、んだと…!」

「僕を、怒らせないでくださいね?」

「っ、帰るぞ!」


由宇を背中に庇って笑顔で言えば、悔しそうに逃げ帰っていった。
なんていうか、とことんベタな悪役だな。


「じゃ、僕らもそろそろ帰ろっか?」

「え、梓くん部活は?」

「……今日は休みもらうよ。」


由宇の質問に答えながらメールを送る。
まぁお叱りは受けるだろうけど、由宇を今、1人にするわけにはいかないしね。


「僕の部屋、くる?」

「……いく。」


あんなことがあったあとで、男である僕の部屋にくるって言う時点でどうかしてると思うけど。
まぁ、その辺はご愛嬌ってことで。





(「ありがとう。」)
(「なにが?」)
(「なんでもない。」)
(「そう。」)




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