「……なんなの、この遭遇率。」
「由宇、もしかして僕に会いたいの?」
「バカは休み休み言ってよ。」
鼻で笑う梓くんに、ムッとした口調で対抗する。
まぁ、梓くんには効かないんだけど。
「はぁ、そうだよーって言えばかわいげあるのになぁ。」
「そんなかわいげいらない。」
「ほんっとかわいくないねよ、由宇って。」
ため息をつかれ、挙げ句にかわいくないって。
知ってるよ、ほっといてよ。
でもその気持ちは知らんぷり。
「別に、梓くんにかわいいって思われたくもないしー。」
「なに、拗ねてるの?」
「拗ねてませーん、自惚れないでくださーい。」
「またまた強がって。」
ニヤリ顔のまま棒読みで言えば、そうやって返す梓くん。
意地の悪い顔に、思わず右フックをお見舞いするとこだった、危ない。
「素直になりなよ?」
「梓くんに言われたくないかなー」
「何言ってんの、僕はいつだって素直じゃん?」
「はいはい私のが素直だから、バカは休み休み言ってねー。」
軽くドヤ顔の梓くんに、今度は私がため息をついてやる。
それから話は振り出しに戻る、と。
(「もうこの話どうでもいい。」)
(「奇遇だね、僕も同意見だよ。」)
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