「苗字、これ明日まで」 「え、あ、私ですか…?」 「お前以外誰がいる?」
すみません、と頭を下げて上司である不知火先輩に頭を下げる。どさっと渡されたプリント。ちらりと時計を見れば4時45分。え。不知火先輩何帰る支度してるの?え、待ってよ、ちょ!
「ほーい5時だー帰れー!あ、苗字はそれ終わらせてから帰れよ。」
…不知火先輩のばか、あほ。三日月頭。…はげ。今日は観たいドラマがあったのになぁ〜、お母さんに連絡しようかな。携帯を鞄から取り出したら、不知火先輩が後ろでこっちを見ている気がした。というか見てる。ドラマはあきらめよう。 私はしょうがなく机に座り、一人仕事に取り組みはじめた。
・ ・ ・
「はー!終わった…」
あれから。 3時間が経って、8時。やっと仕事が終わった。一息つこうと、席をたち、後ろを向く。 すると…
「…か、金久保先輩?」 「ふふ、お疲れさま」
後ろには、マグカップを持った金久保先輩がいた。金久保先輩、さっき帰ったはずなんだけど…、どうして?
「ごめんね。手伝おうかと思ったんだけど…一樹がうるさかったから。せめて、と思ってお茶淹れたんだ。ミルクティーが好きなんだよね?」 「あ、すみません!ありがとうございます!」
…覚えててくれたんだ。どうしよう、嬉しい。というか私のためにずっと会社で待ってくれてたのだ、と思うと心臓が破裂しそうだ。
「いえいえ、お疲れさま」
にこりと笑った金久保先輩からミルクティーを受け取ると、ふわっといい香りがした。
ミルクティーを一杯 (このあと、暇?) (ひ、ひ、暇です!) (じゃあ晩御飯食べに行こう、お腹すいたでしょ) ちょっとだけ、不知火先輩に感謝かな、なんて。
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