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「……うぅ、うまくいかない…。」


進まない仕事に頭を抱えながらボヤく。
締め切りが近いのに、何やってるんだ私。

そう思えば思うほど作業は進まなくて。
でも、任されたからにはやらなきゃと、焦りとプレッシャーに板挟みにされてしまう。


「あれ、苗字さん?」

「! と、東月部長…!」

「顔色、悪いけど大丈夫?」

「あ……えっと…!」


そっと、あまりにも滑らかな動作で私のおでこに手を当てる東月部長。
それから「熱はないみたいだけど……ちゃんと寝てる?」なんて声をかけてくれる。

それはありがたい、すごくありがたいんだけど。


「ち、近くないですか…?」

「え? そうかな?」


にっこり。
至近距離で、あの綺麗な笑顔を私に向ける東月部長。
この笑顔に免疫のない私が耐えられるはずなんてなくて、かあああっと顔が火照るのがわかる。

やだやだ、恥ずかしい。
そう思って俯こうとすれば、クイっと顎を持ち上げられて。


「俯かないで、顔見せて?」

「っ、とっ、東月ぶちょ…!」

「ん?」

「せっ、セクハラですからっ!」

「あ、苗字さん!」


叫んだ勢いで東月部長を振り切り、そのまま廊下へと逃げる。
行く場所なんてないけど、あの場所に留まるなんて選択肢、私にあるわけなんてなくて。

とりあえず、逃げたせいで戻りにくくなった私は、東月部長と仲のいい七海部長のとこに助けを求めにいった。
そこで既に東月部長が先回りをしていたなんて、私が知るのはあともう少しあとのこと。



迷惑上司のいらない本気
(「やぁ、遅かったね?」)
(「っ、とうしてここに…!」)
(「やだな、俺から逃げれると思ってた?」)
(「ひぃ…!」)
(「どうでもいいから、俺を巻き込むのはやめてくれ、仕事が終わらん。」)



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