「じゃあ後は頼んだ。」
そう言った琥太郎ちゃんは私を一樹さんに託してどっかに行った。 私はちらりと一樹さんに目を向けると、一樹さんも私を見ていて。
「病気は治ったのか?」
「あ、えと、ほぼ完治との診断を頂きました。」
「ほぼ、か。」
「はい。 でも特に異常はないみたいですよ。」
そういえば、自分のことみたいに笑顔を浮かべる一樹さん。 それからぐりぐりと頭を撫でてくれる。
「そうかそうか、父ちゃんは安心したぞ!」
「父ちゃんって、でもありがとうございます。」
一樹さんのおかげで私は手術を受ける気になったから。 私が元気になれたのも、学園での私の居場所を与えてくれたのも、思えばきっかけは、きっと全部一樹さん。 もし一樹さんがいなかったら、私はきっとここにはいなかった。 そう考えてハッとした。
「そういえば、一樹さん来年は卒業なんでしたよね。」
「あ? あぁ、そうだな。」
「病気のせいで一樹さんとの学園生活、減っちゃいましたね。」
少し、勿体ないことをした気がする。 そう言えば頭を撫でながら笑う一樹さん。
「大丈夫だ、俺が卒業してもお前がこの学園にいる2年間はきてやる。」
「え、2年間?」
一樹さんの言葉に首を傾げる。 私は今年1年で、一樹さんは2年。 一樹さんがいないのは、1年間のはず。
「柚希、留年だろ?」
「え、しませんよ。」
「は?」
「え?」
「だって出席日数。」
「……あぁ、そのことですか!」
一樹さんの言いたいことがわかって思わず笑ってしまった。 確かに私は出席日数は足りないはずだったけど、どうやら私は理事長さんに(女の子だからって)気に入られてるらしくて特別措置を施してくださったのだ。 その特別措置というのがわざわざ先生方が私の病室まできて授業を行ってくれるというもの。 でもそれには条件があって、定期考査の8割を取ることが必須条件。 私はそれをクリアしたので、特例として留年を免除にしてもらった。 それを一樹さんに説明すれば、ものすごく驚いてた。 まぁ、当たり前か。
(「めちゃくちゃだな、この学園は。」) (「でもそのおかげで助かりました!」) (「まぁ、結果オーライ、か?」)
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