「久しぶりだなぁ、」
車から降りて深呼吸。 久しぶりの学園にちょっと緊張する。
「いつまでそこにいるんだ?」
「あ、琥太郎ちゃん。」
「はやくこいよ。」
そう言って先を歩く琥太郎ちゃん。 その後ろ姿になんだか安心した。
「やっぱり季節が変わると雰囲気って変わりますね。」
「あぁ、そういえばお前は春しか知らなかったんだっけか。」
少し欠伸をしながら答える琥太郎ちゃん。 私はそれに頷いてから言葉を紡ぐ。
「夏の学園も、見たかったです。」
「来年があるだろ。」
「そう、ですね。」
来年がある。 琥太郎ちゃんの言葉に嬉しくなった。
私の手術は無事成功。 病気の方もほぼ完治している。 私はみんなと変わらない生活を送れるんだ。
「いきなりニヤけるな、気持ち悪い。」
「ひ、ヒド…!」
キモいより気持ち悪いの方がグサッとくるってわかってるんだろうか。 きっとわかってるんだろうな。 とりあえず腕をバシバシ叩いてやった。
「あ、そうだ。」
「? なんですか?」
急に立ち止まって振り返り、私の腕を掴んだ琥太郎ちゃん。 びっくりして私も立ち止まって見上げれば、綺麗に笑っていて。
「おかえり、吉岡。」
「た、ただいまです!」
「はい、ストッープ。」
「え?!」
嬉しくて思わず琥太郎ちゃんに抱きつこうとしたら、後ろから引っ張られて失敗。 ていうか今の声って。 そんな期待を込めて振り向けば、予想通りのあの人だった。
(「久しぶりだな。」) (「な、な、ん!」) (「吉岡、言葉になってないぞ。」)
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