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ちょっと前に夏休みに入って、茹だるような暑さが続いている日。
結局、私の体調は悪化することもなければ、良くなるわけでもなかった。
病院でただぼんやり過ごす毎日は快適と言えば快適だが、楽しみは誰かがお見舞いにきてくれたときのお土産話とかくらいで。
あ、でも琥太郎ちゃんがきたときに聞いたときはヤだったな、出席日数が少々ヤバくなってきたとか知りたくなかった。
あーあ、こんなことならちょこちょこサボらなきゃよかったな。


「よ、柚希。」

「あ、一樹さん。」

「どしたんだ、眉間にシワ作って。」


タイミングよくきた一樹さんは、私の眉間を人差し指でトントン叩く。
まぁいうほどでもないし苦笑してごまかした。


「あ、そういえば。」

「なんですか?」

「来週の今日、ちょっと夜に出かけるからな。」

「はぁ……いってらっしゃい。」


いきなりの言葉に首を傾げながら答える。
というか、来週も私は病院なんだし、なぜ私に言うんだろうか。
そう思ってると一樹さんは盛大にため息をつく。
それから一言。


「違ぇよ、バカ。」

「な、一樹さんの方がバカです。」

「いや、確実お前のがバカだ。
じゃなくてだな、さっきの話、柚希も一緒に行くんだよ。」

「え…?」

「文句あるか?」


いきなりの展開に頭がついていかない。
ちょっと待ってよ、文句とかの以前に、私は病院から出れないのよ。
そう思ってそれを言えば「何だ、そんなことか」と笑われた。
いや、そんなことって。


「医者の許可は取ってある。」

「え?」

「1日くらいなら、気分転換としてプラスだからってな。」


だから、あとはお前次第だ。

そう言う一樹さんが、スッと手を差し出す。
訳がわからず、その手と一樹さんの顔を行ったり来たり。


「俺と一緒に、夏の思い出作らないか?」


柔らかく笑った一樹さんに、私は少し戸惑いがちに手をとる。
そっと触れた一樹さんの手は、とてもあたたかかった。





(「よし、絶対に後悔はさせねぇよ。」)
(「……ありがとう、ございます。」)




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