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「夏休み、どこ行きたいんだ?」

「………わかんないですよ、そんなの。」


お見舞いにきてくれた一樹さんの一言に、思わず一瞬固まった。
私が夏休みまでに良くなる確証なんてないのに何言ってんだって、言いそうになったのをグッと堪えて言ったからか少しムスッとした声。
ちょっと後悔したけど、一樹さんは気にしてなさそうだし、私も気にしないことにする。


「決まってないなら決めとけよ?」

「別、に……ないです、行きたいとこ。」

「じゃあ俺が適当に決めていいのか?」

「いや……私、行けるかわかんな、」

「柚希。」


あまりにも普通に。
まるで私の病気なんて、初めからないものとして言う一樹さんに、思わず反論すれば強めの語気で名前を呼ばれて口ごもってしまう。
私は間違ったことを言ってるつもりなんてないのに、何故かすごく居心地が悪くて。


「お前は、どうしてそう消極的なんだ。」

「どうしてって、言われても、」

「大丈夫だ、お前の病気は治る。
誰がなんと言おうと治るんだ、間違いない。」


きっぱりと告げられたそれは、根拠も証拠も何もないのに、一樹さんがあまりにも自信満々に言うから。
少しだけ、その言葉を信じてみたいと思った。





(「行きたいとこ、でしたっけ?」)
(「あぁ。」)
(「ふふ、考えておきますね。」)
(「あ、でもなるべく俺にできる範囲にしてくれよな!」)
(「はいはい、わかりましたよ。」)




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