幸せは続かないって。 誰が決めたんだろうな。
「あ、琥太郎ちゃん。」
「来るのが遅くなってすまない。 調子の方はどうだ?」
「ふふ、気にしないでください。 調子はまぁ、まずまずってとこですねー。」
白いベッドの上で、少し困ったように笑う吉岡。 ちょっと前に不知火に寮まで送ってもらった時、部屋の前で倒れた。 以前から少し体調を崩しがちだったのも、吉岡の病気が体を蝕んでる証拠で。
「不知火は?」
「今日はまだ来てないですね。」
「今日は、ってことは毎日来てるのか?」
「はい。 お金かかるから頻繁に来なくていいって言ってるんですけどね……。」
「まぁ、不知火らしいっちゃあらしいな。」
そんな他愛ない話をして帰る。 吉岡の体に負担をかけさせるわけにも行かないしな。
「あ、星月先生。」
「不知火、お前も見舞いか?」
病院の出入り口近く。 俯き気味に歩いていた俺の耳に見知った声が聞こえた。 顔をあげれば、少し寂しそうな顔をしていた不知火で。
「えぇ、先生はもう帰るんですか?」
「あぁ、吉岡の顔も見れたし俺が長居するのも気が引けるしな。」
「柚希は星月先生なら大歓迎だと思いますよ?」
俺の言葉に少し笑う不知火。 どうやらまだちゃんと笑えるらしく、それに酷く安堵した。
「じゃあ、俺はもう行くな。」
「はい、引き止めてしまってすみません。」
「気にするな。 ……吉岡のことで、無茶はするなよ。」
「わかってますよ……ありがとうございます。」
すれ違うとき、ポンッと不知火の肩を叩く。 吉岡の病気のことで、こいつらが壊れてほしくない。
「……雨、か…。」
病院から出た俺を出迎えたのは、鉛の雲から落ちてくる雫。 確か梅雨はもうすぐ終わるんだったか。
あいつらの抱える問題も梅雨明けと共になくなればいいのにな。
(「いらっしゃい。」) (「よー、元気かー」) (「まぁまぁですよ。」)
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