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「柚希。」

「………なんですか、会長。」


琥太郎ちゃんがいなくなった保健室。
なんとなく膝を抱えたまま座っていたら、会長が隣に座って声をかけた。
いきなりだったし、つい無愛想な感じで答えてしまえば、ため息が聞こえる。


「一樹、だ。」

「え?」

「ほら、呼んでみろ。」


どうやら私が言った「会長」が気に入らなかったらしい。
でも、会ったときからそう呼んでるわけで、苗字ですら呼んだことない私にそれは高度すぎる。


「会長でいいじゃないですか。」

「ダメだ。」


口を尖らせて言えば、即答される。
どうやら腹を括らなければいけないみたい。
私はスッと息を吸い込んだ。


「……か、ずき…せん、ぱい…。」

「先輩はいらない。」

「か、ずき、さん…。」

「……まぁ、ギリギリ合格、だな。」


真っ赤だろう顔を隠しながら言えば、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
なんだか会長……じゃなくて、一樹さんばっかり余裕なのが悔しくてぽてんと一樹さんにもたれ掛かる。


「柚希…!」

「……なんですか、」

「っ、」


一樹さんが少し慌てたように私の名前を呼ぶから私は顔を覆ってた両手をずらして、一樹さんの顔を覗くように見上げる。
すると、いきなり真っ赤に染まった一樹さんに私もつられて赤くなった。


「な、なんで真っ赤なんですか…!」

「おま、お前のせいだからな!」

「責任転嫁です!
だいたい、私なにもしてな…っ!」


私のセリフを聞き終わるより先に、一樹さんの唇が私の唇に触れる。
なんでこのタイミング、っていうかちゅーするの好きなの?この人。


「……あんまりかわいいことすんなよ。」

「な、に言って…!」

「真っ赤だぞ。」


笑いながら私の鼻を摘む一樹さん。
掴めない人だな、ほんとに。





(「そろそろ離してください。」)
(「かわいいな。」)
(「……見え透いたウソつかないでください。」)
(「そう言いながら赤くなってるぞ、ほんとにかわいい。」)
(「もうこれから会長って呼びま」)
(「悪かった。」)
(「………。」)




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