会長と付き合うことになった翌日。 私は保健室を訪れた。
「不知火と、か。 よかったじゃないか。」
「……ありがとう、ございます。」
琥太郎ちゃんに報告すれば、柔らかく微笑んでそう言ってくれた。 対する私はたぶん浮かない顔をしていたと思う。
「どうした、嬉しくないのか?」
「いや……まぁその、えっと…。」
怪訝そうな顔をする琥太郎ちゃんに、歯切れが悪い返事しかできない。 別に、嬉しくないわけではないけど、やっぱりひっかかるものはあるわけで。 正直、どう接したらいいのかわからない。 どうせ、私はいずれいなくなるのに。
「お前、な」
「失礼します。」
ソファーで膝を抱えながら呟いた私に、呆れた風に口を開いた琥太郎ちゃんの言葉を遮るように来訪者の声が被る。 よく知った声にびっくりして顔をあげれば、やっぱりその人で。 琥太郎ちゃんは「ちょうどいいところに」と言って立ち上がる気配。 嫌な予感。
「お前、吉岡を探しにきたんだろ?」
「えぇ、まぁ。」
「なおさらちょうどいいな。」
ニヤリと笑った琥太郎ちゃんに、先が見えてしまった。 やっぱり嫌な予感に限って当たるもんなんだね。
「今からちょっと野暮用で保健室を開けるんだ。 不知火、悪いが吉岡と一緒に留守番しててくれないか?」
「え? まぁ、いいですよ。」
あまりにもお約束な展開に、私は何も言えない。 ていうか、会長も会長で二つ返事で答えないでください。
(「じゃあ頼んだぞ。」) (「あ、じゃあ私もこの辺で。」) (「頼んだぞ?」) (「……鬼。」) (「なんとでも言え。」)
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