柚希に嫌われたかもしれない。
そう思いはじめたら、授業どころじゃない。
確かに柚希はしてもいいとは言ったけど、あんなにねちっこいとは思ってなかっただろう。
だから、あのあと1回も俺の顔見なかったし、明らか教室じゃない方に早歩きで行ったんだ。
ぐるぐる回るイヤな考えに滅入っていると、厄介なヤツがきた。
「かーずきー」
「……あぁ、桜士郎。」
「2こ前の授業、サボったんだってー?
珍しいことするねぇ。」
ギクリとした。
なんてタイムリー。
俺はため息しかでなかった。
「おやや?
この俺に何か隠し事?
くひひっ、スクープの予感っ!」
「なんでもねーよ。」
どっからか出したメモ帳とシャーペンを片手に、ずずいと身を乗り出す桜士郎。
どうしようか悩んでるうちに、いつの間にか次の時間の始まりのチャイムが響く。
「ちぇ、今回は仕方ないから引くけど、絶対突き止めるからねー。」
「あー……もういいから行けって。」
しっしっと手で払いのけるように追い出す。
ったく、桜士郎のせいで休憩した気がしねぇな。
(「……なーんて、一樹がサボる理由なんか限られてるんだし、そっち当たろっかな。」)
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