あのあと、チャイムの音で我に返った私たちはとりあえず生徒会室を出ることに。 それから会長が教室まで送ってくれると言ってくれたけど丁寧に断った。 その間、会長の顔なんかロクに見れなくて、今だって顔に熱が集まって仕方ない。
雰囲気に流された、だけだと思いたい。 これ以上踏み込んじゃいけないと、脳が警報を鳴らす。
「っ、琥太郎ちゃん!」
保健室まで黙々と足を進め、その声とともにやっと顔をあげた。 中には珍しく琥太郎ちゃんがいて、これまた珍しくお茶を淹れるとこだったらしく急須を片手に私をみて固まっている。
「お前、もしかして熱でもあるのか?!」
そう言いながら、急須をおいて険しい顔で私のとこにくる琥太郎ちゃん。 私のおでこに手を当てるけど、もちろん熱なんてあるはずもなく。
「熱はない、な。 ならなんでそんなに顔が赤いんだ?」
「……たの、」
「え?」
小さい声で呟いたけど、聞こえなかったらしく疑問符を浮かべられた。 恥ずかしくて仕方ないけど、ヤケになった私は途切れ途切れだけど叫ぶように同じことを言う。
「っ、会長と!ちゅ、ちゅーした、のっ!」
「……は?」
今度はちゃんと聞こえたらしいけど「何言ってんだ、こいつ?」みたいな顔で見られた。 地味に傷つくよ、それ。
「お前ら付き合ってたのか?」
「……付き合ってない、です。」
「は?じゃあ事故か?」
「違います、普通に、」
何を言わすんだ、と思いながらさっきの話を琥太郎ちゃんに話す。 琥太郎ちゃんは呆れながらもちゃんと聞いてくれて。
「で、お前は不知火が好きなのか?」
「……そりゃあ、」
「言っとくが、恋愛とかの意味だからな。」
「……………。」
琥太郎ちゃんの言葉に、思わず詰まってしまう。 好きです、って。 もしも私に未来があるのなら、言えたのかもしれないけど。
私に未来は、ない。
「お前は深く考えすぎなんだ。」
「琥太郎ちゃん、」
「恋愛なんて、ほとんど感覚だろ?」
よしよしと私の頭を撫でる琥太郎ちゃんの手が気持ちいい。 恋愛は感覚。 確かにそうかもしれないけど、一度求めたらきっと欲が出る。 一緒の未来が、欲しくなる。
それはもう、感覚だけじゃ成り立たない。 だから、これは閉じ込めておかなきゃいけないんだ。
(「とりあえず、次の時間は保健室にいろ。」) (「……はい。」)
- 1 - *PREV|NEXT#
|