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「お前はどこまで知ってるんだ?」


パタンとケイタイを閉じれば、イスに座り、肘をついて両手を組んだ星月先生がそう問いかけた。
俺はポスッとソファーに座ってため息を1つ。
それからゆっくりと口を開いた。


「この前、星月先生と柚希の会話を聞いてしまったんです。」

「この前…?」

「七海と一緒だ、って言ってたヤツです。」

「あぁ、」


やっと思い出したのか、ぽつりと声を漏らした星月先生。
俺は罪悪感というか、とにかく居心地が悪くなった。
いや、別に盗み聞きするつもりはなかったけど、結果的にそうなったわけだし、な。


「たまたま、七海から柚希について聞かれたりしてたんで、あぁこういうことか、みたいな感じでしたね。」

「そう、か。」

「……それと、この話を聞く前に、柚希に近付こうとしたら、拒否されたんです。」

「………。」


言うべきか悩んだけど、なんとなく言おうと思って口にしたら、星月先生は無言で続きを促す。
その様子から、かなり可愛がられてることが伺えて、複雑な気分だ。


「1人でいなくてもいいんだ、って言ったら“今から1人に慣れなくちゃいけない”みたいなことを言ったんです。」

「………。」


そうだろうな、みたいな顔をする星月先生。
それは柚希のことをわかりきっているって雰囲気で……少し、モヤモヤする。


「あいつは、」

「はい?」

「吉岡は、見た目以上にムリをしている。」


不意に話し出した星月先生は、なんか苦々しい顔をしていて。
とにかく、普段ののらりくらりとした姿からは想像できない。
まぁいろいろと悩みはありそうな人だけど、あまり表に出さない人だからな。


「あいつの闇は、同じヤツしか理解できないかと思っていたが、」

「え、」

「案外、違うものかも知れないな。」


不意に見せた、柔らかであたたかい笑みに目を見開いた。
星月先生って、こんな顔できるんだな……てっきりめんどくさそうでダルそうな顔ばかりだと思っていたけど。
それよりも今は。


「それはどういう、意味ですか?」

「さぁ、どうだろうな?
それより、いつまでも保健室に入り浸ってないで帰りなさい。」


そう言って俺を追い出す星月先生はいつもの顔に戻っていた。
やっぱわっかんない人だなぁ、星月先生って。
そんなことを思いながら寮に戻った。





(「……あいつのことを頼んだぞ。」)




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