「……あれ、朝?」
眩しい太陽の光で目が覚めた。 周りを見れば、ここは寮の自室らしいことがわかる。 けど、記憶が曖昧で、どうやって帰ってきたのかがわからない。
首を傾げながらも起き上がれば、部屋の真ん中にある机にぽつんと紙があるのが視界に入った。
「なにこれ……“悪いけどお前起きねぇから勝手に部屋に邪魔したぞ。部屋の物には触ってねぇから安心しろ。あと、お前軽すぎだからしっかり食え。不知火”……。」
一瞬、時間がとまった気がした。 言葉にならない感情が込み上がる中、その隣にあった私のケイタイが着信を知らせるため震える。
「か、会長から…!」
私はほぼ反射的に電源ボタンを押した。 いや、だって何言えばいいの?
『お、繋がった。』
「え…?」
『もしもーし。』
「え?」
『あ? んだよ、繋がってないのか? もしもーし、おーい!』
「あ、は……はい?」
どうやら電源ボタンのつもりが通話ボタンを押したらしい。 気が動転していたとはいえ、あまりにもお粗末な失態も相俟ってかなり恥ずかしい。
『体調は大丈夫か?』
「なん、とか。」
『そうか、でもお前……あんまりムリすんじゃねぇぞ?』
いつも豪快な癖に、急に優しげな声をする会長はズルいと思う。 ぎゅっとケイタイを握って、なにか喋ろうと口を動かすけど言葉にならない。
『まぁ、別にムリに話すことはねぇけど……ツラくなったら頼れ、な?』
「かい、ちょ…。」
私は何も話してないし、話すことすら拒否したのに……どうして。 嬉しいけど、嬉しいより先に裏があるのかとか考えてしまう自分がいた。 そんな自分がイヤで、グッと力いっぱい手を握った。
『じゃあそれだけだ。 ちゃんとメシ食えよ?』
「あ、りがとうございます。」
『おぅ……じゃあな。』
そういいながらも決して自分からは電話を切らずに、私が切るまで待ってくれる会長。 そのまま私は電話を切って、ベッドに戻る。 なんだかぐらぐら揺れて気持ち悪い。
「ツラくなったら頼れ、か。」
ふと浮かんだ会長の顔が寂しそうに笑った気がした。
(「どうだったんだ?」) (「……動揺、してたみたいですね。」) (「そうか……そうだろうな。」)
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