ふわふわふわふわ。
久しぶりの感覚に、自分が倒れたことを知った。 最近は倒れたりしなかったから、一瞬なにが起こったのかわからなかったけど。
「っく、」
どこからか、誰かの泣き声が聞こえる。 誰の声だろ、聞き覚えがある声。
そういえば、倒れるときなにしてたっけ? 授業中、ではなかった気がするけど……思い出せない。
ふと手とおでこにあたたかいぬくもりを感じた。 はやく目を覚ませ、って言われてるみたいで。
そのぬくもりに誘われるまま、スッと意識が浮上する感覚。 ああ、もう時間か。
「……ん、」
「! 柚希!」
「こら七海、あんまり大きな声を出すな。」
「すいません!」
目を開いて、初めに見えたのは嬉しそうな哉太の顔と、安堵の色を浮かべながらも呆れ顔をする会長の顔だった。 あれ、なんで会長? 寝起きだからか繋がらない頭の中だけど、ふと感じたぬくもりを思い出した。
「……あ、哉太と会長だったんだ。」
「ん?」
「なにがだ?」
首を傾げる2人だけど、哉太は私の手を握ってくれてるし、会長は私のおでこに手を当ててくれてる。 夢の中のぬくもりが2人だったのは容易にわかった。 それが妙に安心して、瞼がまた重くなる。
「眠いのか?」
「ん、少し、だけ…。」
「寝てもいいぜ、俺たちが傍にいてやるよ。」
そう言ってくれる2人に笑って、ゆっくり目を閉じる。 閉じていく意識の中で、2人の声が聞こえた気がした。
(「……今の笑顔は、」) (「何も言うな。」) (「先輩の顔、真っ赤っスよ。」) (「お前もだろ。」)
- 1 - *PREV|NEXT#
|