「とりあえずこれで大丈夫だ。」
星月先生の言葉に、心底安心した。 授業中、柚希が倒れるのを詠てから慌てて駆け付けたけど、もう柚希の意識はなくて死ぬほど焦った。 七海がパニックを起こしかけてたおかげで、なんとか落ち着けたけど……さっき、つい勢いで哉太と呼んだこと、こいつは気づいてるだろうか。 まぁ、たぶん気づいてないだろうな。
「……あぁ、そうだ。 俺は今から保健室を出ないといけないんだが……お前たちに吉岡を任せていいか?」
「もちろんっス!」
「そうか。 頼めるか、不知火?」
「……はい。」
恐らく事情を粗方知ってるんだろう、俺たちに気を遣ってくれた星月先生に礼を言えば、優しく微笑まれた。 それからすれ違いざま、「いろいろ頼んだ。」と俺にだけ聞こえる大きさで囁かれる。 ……星月先生には、なんでもお見通しってわけだな。
「じゃあ、それぞれの担任には俺から言っとく。 だから、吉岡の傍にいてやってくれよ?」
「わかりました!」
力強い返事をする七海と頷く俺を見て、満足そうな顔をして去っていった星月先生。 今度、何か差し入れをしなくちゃな。
「………目、覚まさないっスね。」
「まぁ、しばらくは覚まさないだろ。」
「……そうっスよね。」
悲しそうに柚希を見る七海。 あまりにも頼りないその姿に、慰めようと頭を撫でてやる。 こいつはきっと、こっちの立場になることはそうそうなかっただろう。 だからこそ、柚希の心配と、今まで東月や月子たちにかけさせた心配を知って、余計にツラいはずだ。
「っ不知火、先輩!」
「なんだ?」
「俺、今まで、あいつらにこんな思いをさせてたんスねっ…!」
「……あぁ、」
泣き虫は健在なのか、服の袖で目元を拭うその姿に、何も言えずにただ頭を撫でてやった。
はやく、目を覚ましてやれよ、柚希。
(「すみません、」) (「いや、気にすんな」) (「……ありがとう、ございます。」) (「どういたしまして」)
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