「あ、哉太。」
「お、柚希。」
授業中だからかしんと静まった廊下を歩いていると、哉太と会った。 哉太もサボりか。
「今から屋上庭園行くんだけど?」
「行く、いい?」
「あぁ、いいぜ。」
ニッて笑った哉太に、思わず笑みがこぼれた。 会長に1人が怖いとバレたとき、哉太に話したことを後悔したけど、琥太郎ちゃんに話聞いてもらって哉太の笑顔みて、なんか吹っ切れたみたいに清々しい気分。
それからバレないように声を潜めつつも、楽しく屋上庭園に向かう。 哉太って、存在がネタっていうか天然ボケだから……ね。
屋上庭園に着いて、見付かりにくい端っこで2人でねっころがる。 ずっと他愛もない話をしていたのに、そこにきて思い出したように哉太が口を開いた。
「あ、そういえば。」
「なに?」
「不知火先輩に、感づかれたかも。」
「……え?」
一瞬、心臓がとまったように感じた。 たらりと背筋に垂れた冷や汗に、慌てたように動かす。 まぁ実際とまったわけじゃないけど、それでもとまった分忙しなく動いてるように感じる。
「あ、いや、話したわけじゃないぞ? 核心に触れられる前に逃げた、っていうか帰ったし。」
「そう……まぁ、会長は鋭いしね。」
平静を装って言うけど、実際は上も下もわからなくてふよふよ浮いてる気分だった。 もし、これで会長にバレたら……生徒会のみんなにバレたら…私の居場所は、ない。
「ごめん、な…。」
「ううん、別に哉太のせいじゃないし気にしないで。」
「でもお前、顔色……」
哉太の言葉を遮って「大丈夫」って言おうとしたけど、言う前に目の前が暗くなる。 遠くなる哉太の私を呼ぶ声をBGMに、私は意識を手放した。
(「っ、哉太!」) (「不知火先輩っ!」) (「クソ、間に合わなかったか…!」) (「ど、どうしよう!」) (「落ち着け、とりあえず保健室だ!」)
- 1 - *PREV|NEXT#
|