「あ、琥太郎ちゃん?」
「おぉ、吉岡か。」
会長との一件から数日後に、久しぶりに保健室に行った。 どうせ琥太郎ちゃんとは会えないだろうと思ってたのに、琥太郎ちゃんは普通に(汚い)机で仕事していた。 奇跡だ、ミラクルだ。 あ、奇跡もミラクルも一緒か。
「お前、不知火と付き合ってたんだって?」
「アレは誤解だ、って号外で言いましたよ?」
ニヤニヤと笑いながら言う琥太郎ちゃんに、軽くため息をついて答える。 と、琥太郎ちゃんは口元を緩ませながら「わかっている」って言った。 まったく、私なんかからかってもおもしろくないのに。
「そういえば、」
「なんだ?」
「哉太、私と一緒だったんですね。」
「あぁ、聞いたのか。」
ソファーに座って呟くように話せば、琥太郎ちゃんは仕事をしながら答える。 まぁあんまり真面目に聞かれても話しにくいからいいんだけど。 それに、仕事をしながらでもしっかり聞いてくれてるのはわかってる。
「……哉太に、言っちゃったんです。」
「……そうか。」
「バカ、ですよね。」
ソファーの上で三角座りするようにして、膝に顔を埋めて言う。 自嘲気味な声になったからか、琥太郎ちゃんがこっちをみる気配がした。
「別に、いいんじゃないか?」
「え…?」
意外すぎる言葉に、思わず顔をあげた。 琥太郎ちゃんは、優しげな顔で笑っていて、何も言えず凝視してしまう。
「お前は、なんでも1人で抱え込むからな。 それに、いくら俺でも重い病気を持ったヤツの気持ちまでは理解しきれない。 そういう意味でも、お前らが仲良くできるならそれに越したことはないだろう。」
「琥太郎ちゃん……。」
「お前も、今までツラかっただろ?」
よかったな、そう言って笑う琥太郎ちゃんに、何故かすごく泣きたくなった。 泣いてやらないけど。
(「……あー…聞いてはいけないことを聞いた気がする…。」) (「なにしてんの、見付かったのー?」) (「桜士郎、戻るぞ。」) (「は?ちょ、ちょっと引っ張るなよー!」)
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