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心に踏み込みのを拒むわりに、未だに俺に抱きしめられてるこいつは何を求めてるんだろうか。
俺は、こいつに何を与えればいいんだろうか。

わからなくて、でも離すなんて選択肢はないから少し力を込める。
柚希は身じろいだけど、俺から離れる気はないらしく大人しいままだ。


「会長って、あったかいんですね。」

「あ?」

「……すごく、安心します。」


擦り寄る柚希はびっくりするくらいかわい……じゃなくて。
さっき言ったことと、今やってることが逆なのを気付いてないのか?


「俺も、お前が腕の中にいると安心する。」

「ふふっ……くすぐったいです。」


柚希の髪に顔を埋めて言えば、クスクスと笑われた。
でも嫌な気分はしない。
寧ろ、心地好よくていつまでも聞いていたい。


「そろそろ、帰りましょうか?」

「あぁ……もうこんな時間だしな。」

「はい、名残惜しいですけど。」


ぽんぽんと腕を叩く柚希に、俺も名残惜しくはあるが離す。
スッと離れていったぬくもりに思わず寂しくなって伸ばしかけた手を引っ込めた。


「……離れると、寒いですね。」

「そう、だな。」

「ふふ……今日はありがとうございます。」


振り向き、そう笑う柚希に俺も笑顔で答える。
今夜はあまり感情を出さないこいつの素を垣間見た気がして、心があったかくなった。





(「寮まで送る。」)
(「え、でも、」)
(「あのな、俺にもかっこつけさせろ。」)
(「……お願いします」)
(「おぅ!」)




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