[]




「おい、柚希。」

「はい?」

「ちょっと付き合え。」


生徒会も終わり、帰ろうとしたとき。
不意に会長に声をかけられ、有無を言わさない迫力に頷かざるを得なかった。


「どこ行くんですか?」

「いいところだ。」

「……なんか会長が言うと、家族サービスしようとしてるお父さんに見えますね。」

「るっせー!」


そんな会話をしながら連れて来られたのは屋上庭園。
おぉ……星がキレイ。


「寒くないか?」

「大丈夫ですよ。」


ベンチに座って星を見上げる。
会長が何も切り出さないし、私も気にせず楽しんでると不意に会長が口を開いた。


「あの、さ。」

「はい?」

「言いたくないならムリにとは言わねぇ、でもな1人で抱え込みきれなくなったら言え。
お前の荷物くらい、俺はしっかり持ってやる。」

「会長……、」

「お前は俺の大切な娘だからな、守ってやりたいし頼られたい。」


がしがし頭を撫でる会長は、豪快に笑っていた。
きっと哉太とのことがあって油断してたと思う。
あったかくて、つい抱きついてしまったけど、会長は呆れもせずに抱き返してくれる。


「甘えん坊だな。」

「会長の、せいじゃないですか。」

「はははっ、お前は人のあたたかさをもっと知るべきなんだ。
1人は、怖いだろ?」


図星をつかれて、びっくりした。
1人は怖い、だから1人でいることを選んだ。
いずれくる“1人”に耐えれるように。


「柚希……お前は今、何を思う?」

「会長…?」

「残念だけど、お前が話さない限りお前の過去はわからない。
でもな、どんな過去にしてもお前が1人になる理由にはならない。」


ガラガラと、いろんなものが崩れた気がする。
もしかしたら、哉太に話した時点で壊れてたかもしれないけど。


「会長……1人は、怖いです。」

「あぁ。」

「だから、今から慣れなきゃいけないんです。」


幸せは、掴んじゃいけない。
どん底にいたからこそ、私は生きてこれた。
これ以上幸せを、あたたかさを手にしてしまったら……窒息してしまう。

哉太という仲間がいればもう充分すぎるくらい、幸せだから。
他はもう、望まない。





(「お前、何言って、」)
(「あんまり私に構わない方がいいですよ。」)




- 1 -
*PREVNEXT#