月子ちゃんがいなくなってから、琥太郎ちゃんにお礼を言ってから保健室を出ていく。 琥太郎ちゃんはまだ休んどけ、って言うけど、大丈夫って言って出て行った。
授業を受ける気にもなれなくて、当てもなくフラフラと歩く。 さっきのイヤな気持ちはもうなくなっていて、この切り替えの早さには何度も助けられた。
そんなことを考えながら立ち寄った屋上庭園で。
「……あ、七海くん。」
「ん?」
端っこ、しっかり見ないと死角になる位置に七海くんがいた。 のんびり寝転んでるところを見たら、月子ちゃんたちにはまだバレてないみたい。
「月子ちゃんたち、探してたよ?」
「あー……別にそんなに心配しなくてもいいのにな。」
「それはわからなくもないけど、ちゃんとお礼言いなよ?」
「……なんでだよ。」
七海くんの隣に腰を下ろしながらそう言えば、ムッとした顔で言い返された。 荒れてるなぁ。
「大人になればわかる時がくるよ。」
「なんだよ、それ……俺の気持ちもわからない癖にそんな偉そうなこと言うなよ!」
「全然わからない、ってわけじゃないよ。」
「はぁ? お前に俺の何がわかるんだよ!」
上半身を起こして叫ぶように言う七海くん。 私はただジッと見れば、イライラしたようにまた寝転んだ。
「ねぇ、七海くん。」
「……なんだよ。」
「私、七海くんの気持ちわからなくもない、って言ったよね?」
「……あぁ。」
「私もね、七海くんみたいに病気に向き合いたくなくて、周りに病人扱いされたくなくて、荒れてた時期があったの。」
「えっ…?」
目を瞑りながら、そのときを思い浮かべて少し笑みがこぼれた。 あの頃の私が1番人間らしかった気がする。
「どういう、」
「そのままだよ。 私も病気なの……残りの時間もあと僅からしいしね。」
そっと目を開いて七海くん笑いかける。 七海くんは一瞬驚いたあと、すごく申し訳なさそうな顔をした。 でもそのあとに優しく笑いかけて頭を撫でてくれて、なんだか泣きそうになった。
(「初めて、ほんとのお前を見た気がする。」) (「ふふ……このこと、みんなには内緒だよ?」) (「あぁ、でも俺の前ではムリするなよ?」) (「っ、ありがとう。」)
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