「失礼しまー……って、柚希ちゃん?」
「あ、月子ちゃん。」
少し寝てから琥太郎ちゃんと駄弁っていると、月子ちゃんが来た。 保健係でもないのに珍しいな。
「柚希ちゃん、体調悪いの?」
「んーん、ただのサボりだよ。」
「さっきから帰れと言ってるんだがな。」
「琥太郎ちゃんが寂しがるからいるんですよ?」
「はいはい。」
咄嗟の私の嘘に乗ってくれる琥太郎ちゃん。 やっぱり、持つべきものは物分かりのいい保健医だよね。
「え……っと、」
「月子ちゃん?」
「柚希ちゃん、ちょっとこっち!」
「え?!」
ぐっと腕を引っ張られて保健室の隅に移動する。 しゃがんだ月子ちゃんに習って私もしゃがめば、こそっと小さな声でしゃべる月子ちゃん。
「あ、あのね、」
「なに?」
思わず私も小声でしゃべれば、真剣な顔をする月子ちゃん。 ちなみに琥太郎ちゃんは付き合ってられない、とばかりに仕事し始めた。
「そ、その……ほ、星月先生とつっ、付き合ってるの?!」
「……え?」
小声とは言え静かな保健室には大きく響いたことを、必死な月子ちゃんは気付いていない。 あ、琥太郎ちゃんが手を止めてこっちみてる。 そこでため息つかれちゃうと、傷つきますよ?
「……あのね、月子ちゃん。」
「はい!」
「私と琥太郎ちゃんはそんな関係じゃないよ。」
「……え、でも、」
「確かに琥太郎ちゃんにはよくしてもらってるけど、あくまで先生としてだから。」
「そ、そうなの? 私ってばてっきり…!」
そう言って謝る月子ちゃんの頭を撫でる。 まぁ、確かに入学してからあんまり経ってないのにこんなに仲良かったら疑ってしまうのもムリないかもしれない。 でも、やっぱり琥太郎ちゃんは先生だしよくて保護者だからなぁ……。 それに、私には誰かを縛る権利なんてないから。
(「そういえば、どうしたんだ?」) (「あっ、忘れてた!」) (「忘れてたって……、お前らしいというか何と言うか。」)
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