「初めまして、俺の名前は東月錫也。 幼なじみがお世話になってます。」
「は、はぁ……えと、私は吉岡柚希です。 こちらこそよくしてもらって、ます…?」
2人がオカンって言った意味に気付いたのは、東月くんと会話を交わしたとき。 なるほど、なんていうかものすごく保護者っぽいというか……友だちのお母さんに挨拶してる気分になる。 見た目はすっごいイケメン、っていう感じの甘いマスクをしてるのに、これはギャップ?ギャップなの?
「錫也、まじオカンだぞそれ!」
「え、そうか?」
「そうだよ、柚希ちゃんびっくりしてるもん!」
笑いながら言う2人にポカンとした顔の東月くんを見ている限り、素で挨拶してくれたらしい。 嫁にほしいけど、男子高校生としてほんとにいいのかそれで。
「参ったな、他の挨拶が思いつかないな。」
「ふふ、なんか錫也らしいね。」
「それよりメシ!」
「七海くん、食い意地はりすぎでしょ。」
「なっ!」
東月くんの隣で急かす七海くんにそう言えば、赤くなる七海くん。 やば、怒らせたのかな?
「お、俺は別に食い意地なんて…!」
「はってるだろ?」
「はってるよね?」
「う、うるせー!」
なるほど、やっぱり七海くんはからかわれるタイプか。 でも温和というか、どちらかと言えばボケっぽそうな月子ちゃんにまで言われるのってすごいと思う。
「まぁ、いつまでも喋ってたら休み時間なくなっちゃうし、そろそろ食べようか。」
「うわーい!」
「よっしゃ、卵焼きもーらい!」
「こら2人とも、行儀悪いぞ。 あ、吉岡さんも遠慮なく食べてね。口に合えばいいんだけど……。」
わぁっとお弁当をがっつく2人を叱りながら、笑顔で私にも声をかけてくれる東月くん。 少し不安げな彼は、オカンというより良妻賢母だと思う。 あ、でも母親な時点でオカンか。
「……あ、おいしい。」
「ほんと? よかった、口に合ったみたいで。」
「錫也の作る料理は絶品だからな!」
思わずこぼれた言葉。 それに安心したような東月くんに、自分のことのように自慢する七海くんと、それから言葉にはしないものの嬉しそうな月子ちゃん。 なんだかほんとに仲がいいのが伺える。 それは微笑ましい反面、自分には踏み込めないもののように感じて悲しくなった。
(「またみんなで一緒に食べたいね!」) (「え、でも悪いよ。」) (「遠慮するなって、な?錫也?」) (「あぁ、俺は吉岡さんさえよかったらまたお弁当作ってくるよ。」) (「あ、じゃあそうなったら私も半分作るよ。」) (「お前、料理とか得意なのか?」) (「東月くんほどじゃないけど、人並みにはできるよ。」) (「じゃあ私も……」) (「「お前はいい。」」) (「えー?!」) (「(……一体どんな料理を作るのかな?)」)
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