「柚希ちゃん!」
「わっ、月子ちゃん!」
なんだかすっきりしないまま、ぼーっと過ごしていたら、マドンナ月子ちゃんが現れた。 ……マドンナ月子って芸名みたい、じゃなくて!
「月子ちゃんがわざわざ西洋占星術科の教室に来るなんて珍しいね、どうしたの?」
「さっき、哉太に会ったんだって?」
「え?……あぁ、七海くんね、会ったよ。」
詰め寄るように身を乗り出す月子ちゃんに、一瞬だけ七海くんと月子ちゃんのいう哉太が繋がらなかった。 でもそれも一瞬だけだったから、すぐに肯定の意を示せば嬉しそうにする月子ちゃん。 ふと、七海くんから聞いた「月子に気に入られてる」ってことを思い出して、少し頬に熱が篭る。
「あれ、柚希ちゃん、風邪?」
「ちっ、違うよ、大丈夫だから!」
「……そう?」
心配そうにする月子ちゃんに笑顔を見せる。 まさか、月子ちゃんに気に入られてるのが嬉しくて照れてたなんて言えない。
「それでね、哉太も柚希ちゃんのことを気に入ったらしくて、私も嬉しくて!」
「な、七海くんが?」
「うん、“あいつ、絶対イイヤツだ!”って私に話してたんだよ?」
「へー……七海くんが、ね…。」
今まで、人間関係なんかめんどくさいって放棄してたから、なんだかすごくくすぐったい。 不思議なことにそれに対してイヤな気は一切しない。 そんな心の変化が少し怖いと思ってしまったりもするけど。
「それで、もう1人の幼なじみの錫也もね、柚希ちゃんに会いたがってるの。」
「え、ほんとに?」
「うん、だから明日のお昼、一緒に食べない? お弁当はこっちで用意するから!」
パンッと両手を合わせて頼み込む月子ちゃんだけど。 幼なじみの中に私なんかが入っていいのかとか、お弁当までなんて都合がよすぎるよとか。 とにかくそんな考えが私を占めていた。 そんな私を知ってか知らずか、先手を打ってきた月子ちゃん。
「あ、錫也はね、料理が趣味?だから、お弁当は気にしなくていいよ! それから、私も哉太も錫也も呼んでるんだから、ね?ダメかな?」
「うっ……じゃあ、お邪魔します…。」
うるうるおめめで懇願されてしまったら、さすがの私でも断れない。 というか、断れる人がいたらつれてきてほしい。 そんなこんなで、明日の昼食確保、かな?
(「じゃあ、明日のお昼休みに哉太と迎えにくるからね!」) (「え、いいよ、1人でも大丈夫!」) (「ダーメ、大人しく待っててね!」) (「……はぁい。」)
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