「ふーん、結構カワイイ顔してるなぁ。」
「………。」
あぁ、めんどくさい。 ニヤニヤとイヤな笑い方をする目の前の(一応)先輩に、気付かれないようにため息をつく。 会長のおかげで落ち着いたと思ったらコレだ。 きっと“俺は大丈夫”だなんて根拠のない自信があるのだろうけど、そんなものかなぐり捨ててほしい。
「おい、何か言えよ!」
「触らないでください」
「チッ、ナメてんのかこいつ!」
言えって言ったから言ったのに、なんて理不尽なんだ。 手を振り上げた(一応)先輩を隣にいた(一応)先輩が宥める。 ……(一応)ってめんどくさいな。
「とにかく、その威勢、どこまで続くかな?」
「悪役のセリフですね、それ。」
「っ、こいつ…!」
「もういいじゃねぇか!やっちまおうぜ!」
なんとも沸点の低い輩なんだ、この人ら。 ぬっと伸びてきた手は私を掴む。 もちろん、私には最強なんて設定ないし、年上の男の力に抗う術なんて持ち合わせてない。 だからといってこいつらにイイ思いにさせてやる義理もない。 私は、一瞬でも怯んでやらないんだから。
「おいおい、女1人に寄ってたかってなにやってんだ?」
「……え?」
「だ、誰だ!」
「さぁ、誰だろうな?」
振り向いてちらり見えた銀髪に、一瞬だけ、あの人かと思った。 少しだけ跳ねた心臓が何を意味するかなんて、私にはちっともわからないけど。
(「なっ、なんなんだこいつ…!」) (「ハッ、弱ぇな……センパイ方?」) (「ヒッ…!」) (「に、逃げるぞ!」) (「なっさけねぇな!」)
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