これはそう、僕たちが1年のときの話です。 巴さんは誰に対しても公平で、誰に対しても笑顔を向けていました。 だからこそ、初めは巴さんが苦手だった。 彼女の本心がわからなくて、ただ怖いと思っていたから。
そう思ってはいたものの、感情を表に出すことが苦手な僕は割りと普通に巴さんと接していた、つもりだった。 そんな他の人にはきっとわからないであろう心の内を、あっさりと見破ったのは他でもない巴さんで。
恥ずかしながら、彼女がそのことで悩んでいるのに気づいたのは、彼女が生徒会を辞めると言ったときだった。
「なんで急に辞めるなんて…!」
「そうだよ、一緒にがんばろうって、」
「すみません、会長、月子ちゃん。」
前から考えていたんだと彼女は言った。 そのとき感じた、頭をガツンと鈍器で殴られたような衝撃。 僕はとんでもない勘違いをしていたんだとようやく気づいた。
彼女はきっと、僕と同じなんだ。
何故かはわからないけど、そう確信した。 そこまで気づけばもうやることは決まっている。 僕は彼女を生徒会に引き止まるように説得した。
(「(……思えば、あのときからこんな曖昧な関係が始まったのかもしれませんね。)」)
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