ふと前方にふらふらと歩く巴さんがいた。 その手には大きな荷物があって。
「大丈夫ですか?」
「わっ! は、颯斗くん!」
あまりにも危なっかしくて、引っ手繰るようにすれば驚いた巴さんの目が僕を見つめる。 まんまるの目が僕の手に収まった荷物を捉えて、慌てたように手を伸ばした。
「だ、大丈夫です! 重いですよね、すみませんっ!」
「はい、とっても重いです。」
僕の言葉に余計慌てる巴さん。 その姿があまりにもかわいらしくて。 ですが、人の話は最後まで聞いてほしいですね。
「ですから、こんな重いものを巴さんに持たせるわけにはいきません。」
「え…?」
「僕が運びます、どこに持っていけばいいのですか?」
「で、でも…!」
申し訳なさそうな顔をする巴さんに、苦笑してしまう。 巴さんにはもう少し、頼るということを覚えていただきたいです。
「そんな顔をしないでください。 僕は、僕の意思で手伝いたいだけですので、巴さんが負い目を感じる必要はありません。」
「……すみません。」
「謝らないでください。 それより僕は、あなたの笑顔がみたいです。」
そう言えば、ようやくぎこちなくも笑顔を見せてくれた巴さん。 あなたには笑顔が似合いますよ、なんて。 さらりと言えたらよかったのですが。
(「で、でも少しでも持ちたいです!」) (「……そうですね、押し付けがましいのは趣味ではないので、こちらをお願いしますね。」) (「はい、ってこれ少なすぎませんか?!」) (「それでは、行きましょうか。」) (「は、颯斗くん!」)
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