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ベッドに横たわる巴さんの顔にかかった髪をそっと払う。
まだ目を覚ます気配はない。


「よかったね、何ともないみたいで。」

「月子さん……えぇ、そうですね。」


カーテンからひょっこり顔を出し、そのまま僕の隣に立つ月子さんをちらりと一瞥してまた巴さんに目を戻す。
星月先生いわく、軽い過労と貧血らしい。
ゆっくり休めば大丈夫らしく、今は保健室で寝ている次第だ。


「それにしても、働かせすぎちゃったのかな…?」

「……そう、かもしれませんね。」

「颯斗くん……その、大丈夫…?」


恐る恐るそう尋ねた月子さん。
僕はそんな彼女にふわりと、できるだけ優しめに微笑みかける。


「……えぇ、大丈夫ですよ。」


本当は、大丈夫ではないですが。
そう言うだけで精一杯だった。

どうしてこんなに心が乱されるのか。
理由なんて、わかってる。
ただ、理解したくない。


「……はやく、良くなってほしいですね。」


月子さんから再び巴さんを見つめ、そっと呟く。
布団の上に乗せられた小さな手に、僕は触れることができなかった。





(「何だお前ら、まだいたのか。」)
(「! 星月先生…、」)
(「はやく教室に戻れ、サボりは許さんからな。」)
(「……行きましょうか。」)
(「は、颯斗くんっ!」)
(「巴さんをよろしくお願いします。」)
(「あぁ、任せておけ。」)



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