小さい頃から他人の気持ちを汲むのが得意だった私。 それに親の影響もあって、どこか中立の立場にいた私はいつしか“自分”を見失うようになった。
どれだけ貶されても、どれだけ屈辱を受けても、笑顔でその場を収めること。 それが親の望むことだったから。 できないなんて、親が許すはずもなかったから。
いい子、って言われたくて。 いらない子、って思われたくなくて。
ただ、必死だったの。
でもある日、限界がきて。 それでも演じなきゃダメだから、歯を食いしばった。 そこで見つけた逃げ道が、星月学園。 全寮制のこの学園で、親の目の届かないこの場所で、私は少し骨休み。
そんな中、私は彼に出会った。 完璧な笑顔に、時折見せる寂しげな表情。 どうやら私は嫌われてるみたいだけど、興味を持った。
でも彼を知れば知るほど、彼の傍にいることがツラくなって。 どこか鏡を見ているような気持ちが、ずっと胸で燻っていた。
一時期、彼から離れようとしたこともある。 でも彼は引き止めてくれた、必要としてくれた。 自惚れかもしれないけど、そう感じずにはいられなくて。
きっとそこが、まるで傷を舐め合うような、そんな微妙な私たちの始まり。
(「……巴さん? 聞いてますか?」) (「えっ、あ、すみません!」) (「珍しいですね、巴さんが仕事の話を聞き漏らすなんて。」) (「も、申し訳ないです…。」)
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